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北極・南極の2024年10月の海氷情報

1.北極における2024年10月の海氷状況

図1は、8月1日から12月31日までの海氷域面積(注1)の変化を示しています。2024年10月の海氷域面積は緩やかなペースで増加を始めましたが、10月中旬以降は衛星観測史上最少を記録した2012年の値を下回る状態で推移し、 10月31日を迎えました。2024年10月の平均海氷域面積は約5.7995百万平方キロメートルで、前年より約0.5545百万平方キロメートル(おおよそフランスの面積に相当)減少し、衛星観測史上3番目に小さい面積となりました(図2)。 また、長期的には、1年あたり約0.0789百万平方キロメートル(おおよそ北海道の面積)の割合で減少しており、この傾向は9月とほぼ同様です。 2024年10月の海氷分布を見ると、2010年代平均と比較して、2024年の海氷域はバレンツ海北側やボーフォート海南部からカナダ多島海にかけて小さいことがわかります(図3左側)。 一方、カラ海からラプテフ海、東シベリア海にかけてのロシア沿岸域は海氷に覆われているものの、海氷密接度(注2)は50%以下と高くありませんでした(図3右側)。

図1:北極海氷域面積の変化(8月1日〜12月31日)。黒波線:2010年代(2010〜2019年)平均、黒実線:衛星観測史上最も9月の海氷域面積が小さかった2012年、赤実線:2024年(8月1日〜11月7日)。海氷域面積の計算には5日平均の確定値を使用した。


図2:10月の北極海氷域面積の変化(1979年〜2024年)。青実線は1979年から2024年までの長期変化傾向(約7.89 平方キロメートル/年)を示している。


図3:北極における2024年10月の(左)海氷域(海氷密接度15%以上)と(右)海氷密接度の空間分布。橙実線は同月の2010 年代(2010〜2019年)平均の海氷縁(海氷密接度15%で定義)を表している。


2.南極における2024年10月の海氷状況

図4は、8月1日から12月31日までの海氷域面積の変化を示しています。南半球では海氷域が年間で最も拡大する時期を過ぎ、現在は海氷が後退する融解期に入っています。 2024年10月の海氷域面積は、衛星観測史上最少を記録した2023年の同時期より大きい状態で推移していましたが、10月下旬には減少速度が速まり、2023年に近い値にまで縮小しました。 2024年10月の平均海氷域面積は約17.1094百万平方キロメートルで、9月と同様に衛星観測史上2番目に小さい面積となりました(図5)。 2010年代平均の10月の海氷縁と比較すると、2024年10月の海氷密接度の空間分布では、リーセル・ラーセン海やロス海の北側で海氷後退が顕著であり、 ベリングスハウンゼン海では逆に海氷が北側に拡大していることが確認できます(図6)。また、注目すべき点として、11月上旬に海氷域面積が2023年の値を下回りました。 この状態が年間で最も海氷域が縮小する2月まで続くと、2025年に海氷域面積最小値の記録を更新する可能性があるため、その原因を解明するためにも注意深くモニタリングし、研究を継続してゆく必要があります。

図4:南極海氷域面積の変化(8月1日〜12月31日)。黒波線:2010年代(2010〜2019年)平均、黒実線:衛星観測史上最も9月の海氷域面積が小さかった2023年、赤実線:2024年(8月1日〜11月7日)。海氷域面積の計算には5日平均の確定値を使用した。


図5:10月の南極海氷域面積の変化(1979年〜2024年)。


図6:南極における2024年10月の(左)海氷域(海氷密接度15%以上)と(右)海氷密接度の空間分布。橙実線は同月の2010 年代(2010〜2019年)平均の海氷縁(海氷密接度15%で定義)を表している。


注1:海氷域面積
通常の北極・南極海氷域面積の計算では、データ欠損による算出エラーを防止するため、複数日データの平均から算出しています。本記事では、5日平均の確定値を使用しました。 2日平均の速報値は、ADSをご参照ください。

注2:海氷密接度
ある面積に占める海氷の割合(0〜100%)を示す用語である。